The Japan Journal 掲載
The Japan Jurnal 2005年9月号 巻頭特集 日本人と森林
「緑の地球ネットワーク(Green Earth Network : GEN)」は中国で植林活動する日本のNGOの一つであるが、その実績は群を抜いている。1992年に活動を開始し。現在までに1500万本を植林し緑地化面積は4500haにのぼる。
「一番の成功の理由は、地元の人との関係がうまくいったということだと思います。あくまで 地元の人たちを主体的に計画を進め、それをこちらがサポートしていくかということが大切ですと、一年の三分の一は中国で過ごす事務局長の高見邦雄はいう。
GENの活動地域は、北京から西に300km、黄土高原(Huangtu-Plateau)の一角にある山西省大同市(Shanxi Province, Datong City) の農村地帯だ。黄土高原は日本の国土の1.4倍、52万平方キロにおよぶ広大な乾燥地帯で、年間の平均降水量は400mm、冬の最低気温は零下30度にもなる。2000年ほど前まではこの地域の半分は緑に覆われ、ここを流れる黄河も、今のように黄色ではなく澄んでいたと言われる。しかし、人口増加により、食糧生産や燃料生産のための森林破壊が進み、森が消滅してしまった。このため、黄土高原全体です水土流失、干ばつ、そして砂漠化が深刻化している。春には強風と共に砂嵐が起こり、大同市内では視界がほとんどきかなくなる時もある。そして砂は日本にも到達し、空が黄色にぼんやりと霞む。
このような厳しい条件の中で、高見は現場を回り、農民と共に生活しながら、植林を広げるためにはどうすべきかを常に考えていた。高見の熱心な態度は中国のカウンターパートである役人や農民の心を動かし、土壌の侵食を防ぐためにマツを植えてグリーンベルトを作る「地球環境林」、苗木と栽培技術の改善や人材育成の拠点となる「環境林センター」と言ったプロジェクトが立ち上がっていった。さらに、1994年から小学校に付属果樹園をつくり、そこからの収益を教育支援に当てると言う事業も始まり、現在まで40ほどの村に合計500ha余りのアンズの果樹園を建設した。
野ウサギ、バッタ、寒さ、そして干ばつなどの被害に遭いながらも、アンズやマツの植林面積は徐々に拡大していった。すると、土が固定化し、雨による土砂流失も減少し始め、さらに、枝を原料として利用できるようになったので、燃料のために木を伐採することも少なくなった。
また、1994年にGENのプロジェクトで小学校にアンズを植えたある村(人口1200名)では、その後、自主的に植林地を拡大し、アンズの実の販売で村人の収入もかっての4?5倍に増えた。この村は地元中学生の高校への進学率も上昇し、2000年には、初めての大学生を送り出せるほど村人の生活は豊かになった。4月にアンズの花が咲く頃に村はアンズの花祭りを開催し、1万人以上の人が訪れる。
「砂漠化を作り出しているのは人間社会です。環境破壊と貧困の悪循環を断ち切り、よい循環へと変えていくことで砂漠化の問題は解決されていくのだと 思います」と高見は言う。
GENの事業には毎年延べ二万人もの中国人が従事するようになった。また、日本からこれまでに2000人のボランティアが植林活動に参加している。
2001年、高見は中国政府からその功績を称えられ、中国の社会や科学技術の発展に貢献した外国人に送られる賞で最も権威のある「友誼奨(Friendship Award)」を受賞している。今年5月には自らの体験を記した著書を中国で出版した。
「何の見返りも期待せずに、中国の緑化のために、ひたすら木を植えた高見さんに共感を覚えました」と中国で事業を行う日本の企業の支援を行っている「スウィングバイ2020」社長の海野恵一(Unno Clyde, president of Swingby 2020)は言う。
海野は昨年からGENのプロジェクトで植えられたアンズの木になった実を販売する事業を計画している。今後、持続的に環境を改善してくためにはプロジェクトに事業性を持たせる必要性を感じているからだ。「木を植えると言うことは、アンズの村のように人を育てるということにもつながります。」植林を通じて、それに参加する人々の将来の夢や希望を叶えられる仕組みを作ることが重要です」と海野は言う。雑誌情報
| 雑誌名 | The Japan Journal 2005 |
| 掲 載 号 | 9月号 |
| 執筆者名 | 澤地治 |
| 出版社URL | http://www.japanjournal.jp/ |




